イタリアもゴールデンウイーク前半は、4月25日の解放記念日、5月1日のメーデーの祭日で、ポンテと呼ばれる飛び石連休があり、これを利用して、例年なら旅行者が増えるのですが、今年も昨年同様静かに過ぎそうです。
さて、前回の予告通り、トスカーナ州の伝統的食品としてEUから認定されているものについて紹介させていただきます。
ワインにDOCGやDOCの呼称があるように、食品にもEUが認定したDOP(原産地保護呼称)とIGP(地理的保護表示)の2種類の商標があります。
この表示がある生産品には加工品も含まれており、その商品が規定に合致した地域で生産加工されたことを保証します。他の地域で生産されたコピー商品との差別化を図り、消費者にも安心をというシステムです。
ただ、有名な伝統食品でありながら認定されていないものも数多くあるのが実情です。
DOP、IGPの認定品には所定のマークがあり、それが付加価値になるので、スーパーのチラシでも目立たせて表示しています。


トスカーナにはDOPが16、IGPが15を数え、びっくりするほどの品目が認定されています。
ただ、DOPやIGPで保証されたエリアが行政エリアと合致しないこともあり、複数の州にまたがって認定されている品目もあります。また、オリーブオイルはトスカーナ州の中だけでさまざまな産地が認証を受けていて、DOPとIGP合わせて5品目となっています。
そこで、食品カテゴリー別にまとめてみましょう。
栗関連
DOP カプレーゼ・ミケランジェロの栗(ルネサンスの巨匠の生まれたアレッツォ県の小さな村)
DOP ルニジャーナの栗の粉(リグーリア州境、マッサ・カッラーラ県の山のエリア)
DOP ガルファニャーナのネッチョ(ガルファニャーナの栗の粉。ルッカ県の山岳エリア)
IGP アミアータ山の栗(オルチャ渓谷の象徴的な山)
IGP ムジェッロのマロン(フィレンツェ県の北東エリア)
エクストラバージンオリーブオイル
DOP キャンティクラシコ(ワインのキャンティクラシコと同じ地域)
DOP ルッカ(ルッカ県の山岳エリアを除いた地域)
DOP セッジャーノ(グロッセート県のシエナ県との県境、アミアータ山付近)
DOP テッレ・ディ・シエナ(シエナ県のほぼ全域)
IGP トスカーナ(トスカーナ全域)
穀類とその加工品
DOP トスカーナパン(製法や原料に細かい規定がある。トスカーナ州全域)
IGP ガルファニャーナ地方のスペルト麦(イタリアでファッロと呼ばれる古代麦)
IGP トスカーナのカントゥッチーニ(アーモンド入りのかたいクッキー。トスカーナ州)
IGP シエナのリチャレッリ(アーモンドプードルのクッキー。シエナ県)
IGP シエナのパンフォルテ(ナッツとフルーツピールを蜂蜜でかためたお菓子。シエナ県)

乳製品(チーズ)
DOP ペコリーノ・トスカーノ(製造工程や原料に規定ある。トスカーナ州全域)
DOP バルツェ ヴォルテッラーノのペコリーノ(アザミなどの植物レンネット、放牧された羊の生乳から生産。地域もボルテッラ周辺とかなり限定される)
DOP ペコリーノ・ロマーノ(グローセット県、サルデーニア島、ラッツィオ州)
肉類
DOP チンタ・セネーゼ(シエナの中世のフレスコ画にもその姿が描かれている古代種の豚で、その肉の加工品もDOP認定。トスカーナ全域)
DOP トスカーナの生ハム(豚肉はトスカーナとその周辺地域、加工はトスカーナ州内)
DOP カッチアトーラ・サラミ(小型サラミ。認定地域はイタリアの北部のフリウリ・ヴェネツィアジュリア州、ピエモンテ州、南はモリーゼ州と広大)
IGP 中部イタリアの子羊(北はエミリア・ロマーニャ州のパルマ、南はマルケ州、ラッツィオ州まで。羊の品種も限定されている)
IGP フィノッキオーナ(フェンネルシードで味付けされたサラミ。島を除くトスカーナ全域が認定地域)
IGP コロンナータのラルド(大理石で有名なカッラーラのコロンナータ地域で加工熟成される豚の背脂)
IGP モルタデッラ・ボローニャ(ボローニャのソーセージですが、認定エリアは北部のピエモンテ州から南部のモリーゼ州までと広範囲)
IGP プラートのモルタデッラ(プラート県に限定されたモルタデッラ・ソーセージで、一般的なボローニャのソーセージとは異なり、あまり知られていない)
IGP 中央アペニン山脈の白い牡牛(Tボーンステーキで有名なキアーナ牛もこの中に含まれる。北はボローニャから、南部のカンパーニャ州のカゼルタ県まで)
その他
DOP ルニジャーナの蜂蜜(リグーリアとの州境の栗の産地と重なる)
DOP サンジミニャーノのサフラン(サンジミニャーノ市内限定)
IGP ソラーナのインゲン豆(小粒の白インゲン豆。ピストイア県うち、ルッカとの県境エリアで生産される)
IGP ボルゴターロの茸(パルマ近郊、アペニン山脈にかけてのボルゴターロ地域。ポルチーニ茸の産地)
地元のグルメ食材を基本から見直そうと思いチェックしたDOPとIGPです。
見直して知った意外な事実は、ボローニャのモルタデッラやペコリーノ・ロマーノがDOPやIGPの認定を受けて生産されていること、聞いたことのなかったアペニン山脈寄りの小さな町に認定品が意外と多いことです。
一方、こんなにたくさんあるDOP、IGPなのに、認知度の高いピエンツァのペコリーノ・チーズやチェルタルドのタマネギや、トリュフなどの特産品が認定されていないのも不思議に思いました。
そして、前回の世界遺産の記事でもトスカーナの海の存在感が薄いと感じたのですが、今回チェックしてみてDOP、IGP認定海産物はゼロ、海がありながらトスカーナが内陸の印象を持たれがちでも仕方ないかなと改めて感じさせられました。
今、シーズンを迎える食材は子羊ぐらい。せっかくだからトスカーナの味覚も堪能したいという旅行者の方には、日は短くて天候も悪いですが、栗、オリーブオイル、トリュフも出そろい、濃厚な肉料理とワインが美味しく感じられる晩秋から初冬がよいのかもしれません。
2021.4.28

shinako

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