イタリアのコロナウイルスロックダウンから約2か月、美術館・教会の再開が許可された5月18日。
朝から楽しみに、おなかがすかないようしっかり朝食を食べ、サン・マルコ美術館に向かいました。
5月18日は第3月曜日だったので、国立美術館で開館日なのはフィレンツェ市内でここだけだったのです。
サン・マルコ広場にたどり着き、美しい白いバラのむこうの教会を見てがっかりしました。
教会の入り口も、美術館の入り口もすべて閉まっているのです。
何日からオープンという告知もなく、オフィシャルサイトには17日まで法律により休館とだけでした。
今日は開館だと思ったので残念でした。
法律通り開けたとて、やってくるのは美術が好きな観光ガイドや年間パスを購入済みの人ぐらいで、収入にはつながらないことは目に見えています。
2か月以上閉じたままだったので、ウィルス感染防止対策を考えた館内の整備などをしなければなりません。「再開」といっても、そのための準備が必要で、今日は閉館したまま中で準備に追われているのかもと思い、トボトボ引き返しました。
帰路、確実に開けているサンタ・トリニタ教会へ向かいました。
5月17日に通った時は、中央の扉が開いて中のステンドグラスが浮かび上がって見えて美しかったです。
「今日は信者の方のみです。明日から一般に開放します。」
といわれました。
5月18日に教会の中に入り、正面向かって右側のチャペルから順に鑑賞させていただきました。
入口近くのカウンターに、お布施やリーフレットと一緒に消毒薬も用意されていて、そのために中央の扉を入口に変更したようでした。
教会の中には、私以外にも見学者やお祈りをささげている方がいました。
外も静かなのですが、教会内部の静けさはまた違った静寂が広がっていました。
サンタ・トリニタ教会はフェラガモ本店の真正面にあってフィレンツェのゴシック、ルネッサンス時代を代表する作品が今もチャペルを飾っているだけでなく、ミサとお昼休憩以外の時間は無料開放されています。
ひさしぶりに見る壁画や祭壇画を、美術館ではなく、今も活動する教会で依頼主や作家が意図したままの環境で鑑賞することになったのは、神様の思し召しのような気もしました。
ヨーロッパでは近代になるまで宗教画が大勢を占め、個人の部屋に飾るプライベートな作品も飾られていた空間の一部を担うものとして描かれたものも多く、美術館という空間は効率よく名作をいっぺんに鑑賞できる反面、展示されている各々の美術品が背負っている背景から切り離されてしまっているので、そのあたりを想像しながら鑑賞していかないと楽しみが深まらないところがあります。
感染が収まってご旅行に来られる機会がありましたら、ぜひ教会や宮殿内部をご鑑賞ください。
近代になると作家主体に作品が制作され、コンクールで評価され画廊で販売されるのが一般的となってくるので、展示環境と作品の関連性は一気に薄らいで単体で完結したものが増えてくるように思います。
そこでも、知ると知らないでは大違いなのが歴史です。
鑑賞対象として美しさを求めたものも多いのですが、テーマが当時の社会問題など、時代の空気を感じさせる作品が多くなってきます。
今イタリアの近代史を読んでいるのですが、これで苦手だったジャンルを少し克服できるかなと思います。
読書は大切と再認識しました。
2020.5.20

shinako

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