私は5月末に行われたシエナ観光の研修に参加するために、久しぶりにシエナへ行ってきました。
研修は市庁舎とサンタ・マリア・デッラ・スカーラ救済院の2か所だったのですが、せっかく日も長くなっているので、朝早く出て古文書館なども見学しました。
国立古文書館・博物館は、ピッコロミニ宮殿の中にあり、ビッケルナ美術館が内部に設置されており、一般公開されています。
ピッコロミニ宮殿はピエンツァの街を作らせた教皇ピウス2世の甥たちにより建設されたルネサンス建築の宮殿で、近くには併せて建築されたロッジアもあり、中世の街シエナの中で異質なルネサンス空間が広がる一角になっています。一族のシンボルをあしらった鉄輪の建物飾りがなんともユニークです。

「ビッケルナの書」というのは、シエナ共和国の時代から1786年までのシエナ市役所の会計記録です。その表紙の板絵は当初その年を象徴するようなエピソード、執務風景や宗教テーマなどで描かれ、15世紀の後半から表紙の機能を離れて壁に飾られるようになり、大きさも区々になっています。古文書館が保有する100枚を超える板絵の表紙が時代を追って展示されています。
これらは古文書館の部屋の中を回遊して見学できるようになっており、一番古いものは1258年で、特別展で貸し出されていたものはカラーコピーですが、その貸出期間が表記されていました。

1478年のパッツィ家の陰謀の後の時代、シエナとフィレンツェの抗争でフィレンツェに不利な出来事が描かれているのが、フィレンツェで語られることはないので、とても興味深かったです。

メディチ家に征服され、トスカーナ大公国になった後の板絵は、元々記録簿の表紙であったとは思えない大きなサイズのものが制作されるようになり、メディチ家の紋章が大きく描かれているものが目につきました。

展示室は書庫にある感じで、周囲の書棚には分厚い革表紙の数百年前の記録簿などがずらりと並んでおり、緊張感を覚えました。

研修の待ち合わせ時間があったので急ぎ足で見学し、保安のためにつかず離れずついてくださっていた方に出口を訪ねると、「まだ見るものがあるのよ」といわれ、光に当たって劣化するのを避けるため、布のカバーがされたガラスケースが並んだ廊下を指し示されました。
そこにあるもっとも古い資料は1000年、羊皮紙にかかれたものです。

たくさんの資料が時代を追うように陳列されていました。本当に残念なことに時間がなく、後ろ髪を引かれる思いで古文書館を後にしました。
一般人が書庫の中に入ることができて、ビッケルナだけでなく大量の貴重な古文書を常設展示してくださっていることに驚きました。改めて時間を取ってじっくり見学しようと思います。
MUSEO DELLE BICCHERNE
国立古文書館・博物館
Banchi di Sotto 52, Siena
Tel. +39 0577 247145
開館日時:金曜日と土曜日の10:00~13:00
公式サイトはこちらから
2021.6.2

shinako

最新記事 by shinako (全て見る)
- フィレンツェの守護聖人 - 2021年6月23日
- フィレンツェ、ダンテの特別展とジョット - 2021年6月16日
- フィレンツェ郊外のショッピングモール - 2021年6月9日
コメントを残す