残念なことに、イタリアでは再び新型コロナが猛威を振るいだしました。
ウフィツィ美術館は、再び閉館を決定してしましました。
この夏、ローマで開催されたラファエロ展からフィレンツェに戻った「レオ10世の肖像」をじっくり鑑賞できると思っていた矢先、残念です。
というのも、ラファエロ展は新型コロナ感染防止のため、1部屋の滞在時間は5分、1回ごとに8人の完全予約制と厳密に決められており、作品をじっくり鑑賞する余裕がなかったのです。
「レオ10世の肖像」はウフィツィ美術館所有のため、特別展が終わればフィレンツェでいつでも鑑賞できることもあり、限られた鑑賞時間をなるべく遠方から来た作品に割こうとしていたのです。
それでも2年の修復の歳月を費やした後、作品がどう変化したのか気になっていたのと、ブースのメイン作品でもあったので自然と目がひきつけられました。
その時の印象は、
「あれ?こんなに地味な色使いだったかしら?」
というものでした。
後からこの特別展の図録を購入し、この絵画の修復に関する解説を見て、その印象が間違っていなかったことがわかりました。
「レオ10世の肖像」は早くから高い評価を受けていた作品です。この絵画が描かれた1518年の8年後の1526年、フィレンツェで最も評価の高かったアンドレア・サルトという画家(ウフィッツィ美術館に複数作品が複数展示されているフィレンツェの後期ルネッサンスを代表する画家)がメディチ家の依頼により、精巧なコピーを製作し、本物としてマントバ公に送られました。
アンドレア・サルトの模倣作品は、現在はナポリのカポディモンテで鑑賞することができます。
私も昨年ナポリに行った際鑑賞したのですが、色遣いが修復前のラファエロの「レオ10世の肖像」より地味な印象でした。同時代の優秀な画家が描いた模作の色味が違うとはおかしいなとは思っていたのです。
ラファエロの「レオ10世の肖像」は評価が高かったがために、ナポレオンのイタリア征服の際、ルーブルに(手荒な扱いで)持っていかれ、絵の具の一部が下塗りから剥離してしまった部分もあったことを知りました。
フレスコ画をはじめ、絵画の修復では、洗浄により蝋燭による汚れや変色した上塗りのニスなどの汚れが落とされ、鮮やかな色がよみがえることが一般的です。
修復後は色が鮮やかで、昨日描かれたかのような鮮やかな色をとりもどすことが一般的な中、修復後落ち着いた色合いを取り戻した珍しい作品です。
もうすぐ再びロックダウンになるのではないかという状況のイタリアですが、この騒ぎが収まり、気兼ねなく旅行ができるようになりましたら、ぜひラファエロの肖像画の代表作、レオ10世をご鑑賞くださいませ。
フィレンツェには、ウフィツィ美術館とパラティーナ美術館で20作品近いラファエロ作品があります。
2020.11.4

shinako

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