トスカーナ州シエナから少し離れたところに、天井のない美しい聖堂と、聖人ガルガーノの伝説の剣の残る場所、サン・ガルガーノがあります。
1218年から工事が始まり1288年に完成したといわれるサン・ガルガーノ修道院。その衰退は早かったようです。1329年の飢饉、1348年のペストの流行により地域、修道院も廃れ、後に聖堂の天井に使われていた鉛を売り飛ばしてしまったこと、そして落雷によりその屋根が崩れ落ちてしまったと言われています。
教会向かって左側に回ると回廊つきの庭があり、そこからも屋根のない聖堂がはっきり見えます。チケット売り場と入り口もそちらにあります。チケットは2ユーロ。
入り口を入って、聖堂にたどり着く前に通るのは司教座聖堂参事会員室。きれいなアーチ上の天井が印象的です。
そして、いよいよ、天井のない聖堂へ入ります。
今の時期、夜になると聖堂内でコンサートやオペラが公演されるため、聖堂の身廊には椅子が並べられ祭壇のあたりにはステージが組まれていました。
しかし、その壮大さは息を呑むものがあります。
聖堂内に入ったにもかかわらず、上を見上げるとそこには透き通った青い空とまぶしい太陽…。
廃墟となった教会の茶色、灰色と、まぶしいほどの青のコントラストがなんともいえない美しさをかもし出しています。
祭壇の後方に位置する壁には大きな窓の跡。
この壁は東を向いているそうです。ちょうどミサの始まる午前中にこの窓から太陽の光が神々しく入ってくるように設計されていたのですね。
空を見上げると、なんだか自分が小さくなって、きれいな箱の中に入っているような気分になりました。
聖堂の左側の側廊、正面入り口入ってすぐのところに、一つだけ顔の彫られた柱があります。サン・ガルガーノ修道院の建設に大いに貢献した人の肖像彫刻だとか…。
残念ながら天井があったころの聖堂を見ることはできませんが、この天井のない状態が、廃墟の状態がなんとも言えず美しいと私は思います。
サン・ガルガーノ修道院からほんの少し離れたところにモンテシエピ礼拝堂があります。
この内装もシンプルな礼拝堂の中には聖ガルガーノの伝説の剣があります。
12世紀、シエナ地方の貴族の家庭に生まれたガルガーノは、後に騎士となり、いくつもの戦争を経験します。しかし、戦いに明け暮れた日々を過ごすガルガーノは心身ともに疲れ果てていきました。
言い伝えとしては戦に疲れ果てたガルガーノの前に天使が現れ、戦いではなく信仰の道をガルガーノに啓示します。ガルガーノは決意し、乗っていた馬を降り、二度と剣を振るうまいという決断のもと、持っていた剣を岩に突き刺しました。すると、剣は岩に吸い込まれるように入っていったそうです。岩に埋まった剣を十字架と見立て、ガルガーノはずっとそこで祈りを捧げたそうです。
その伝説の聖剣がある場所にモンテシエピ礼拝堂が建てられ、現在でも聖ガルガーノの聖剣を見ることができます。
天井のない美しい聖堂と、伝説の剣が眠るサン・ガルガーノ。
大変興味深い場所です。
2015.7.22

shiho

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