9月に入って1週間が過ぎ、寒がりの私には、明け方は涼しいを通り越して寒く感じるほどになりました。
秋といえば、芸術の秋。
というわけで、秋晴れの週末に訪れたサン・ミニアート・アル・モンテ教会に行ってきました。
今回は、サン・ミニアート・アル・モンテ教会のビザンチン様式のモザイクを参考に、キリスト教の4人の福音史家の図象をご紹介します。
この教会は、フィレンツェで最初に殉教した聖ミニアートを祀っている、11世紀のロマネスク時代の建築様式や装飾がよく残っている歴史ある大変美しい教会です。
パノラマスポットとして有名なミケランジェロ広場から徒歩5分ほど、ここからのパノラマも美しいので、ぜひ足を延ばしたい場所です。
ビザンチン様式のモザイクといえば、ヴェネツィア、ラヴェンナを思い浮かべるかたが多いと思います。
しかし、フィレンツェにも洗礼堂の天井と、サン・ミニアート・アル・モンテ教会のアプシス(教会内部の中央突き当りの半円部)の半ドームに、美しいビザンチンモザイク(色ガラスキューブで構成されたモザイク)を見ることができます。
背景は、神の世界ということで金色です。
中央に大きくキリストが表され、正面左手の女性が聖母マリア、右の若い聖人がこの教会の名前になっている聖ミニアートです。
そして、キリストの周りに翼が付いた動物4体が表されています。
聖母側の2体上方の鷲が福音史家ヨハネ、その下の翼のついたライオンが福音史家マルコです。聖ミニアート側の2体上方の天使が福音史家マタイ、その下の羽のついた牛が福音史家ルカです。
ヨハネは新約聖書の中で重要な、同じ名前の洗礼者ヨハネがいます。見分け方は洗礼者ヨハネの方は毛皮を身に着けて十字架の杖を持っていることです。
福音史家同士は決まった持ち物は本、と共通していますが、年齢も一定しておらず、聖母マリアのように青いマントと赤い服というような決まった服装もありません。
そこで、どれが誰かを判別するのに便利なのがシンボルなのです。
聖人を人の姿であらわしている場合も、それが明確に誰であるかわかるように鷲が一緒に描かれていたら福音史家ヨハネ、翼のついたライオンなら福音史家マルコ、天使はマタイ、翼のついた牛なら福音史家ルカです。
特にチャペルの天井画装飾で4人の福音史家が象徴的に描かれる場合は、誰であるか明確に判別できるようにこのシンボルを添えて聖人が描かれている場合が多いです。
福音史家ヨハネは、キリストに愛された使徒として、最後の晩餐でキリストの隣で泣き崩れた姿で描かれ、キリストの磔刑で聖母と磔刑を挟んで青年の姿で表されています。ただ、亡くなったのは高齢になってからなので、いつも若い姿で表されるというわけではありません。
ヴェネツィアの守護聖人は福音史家マルコで、ヴェネツィアのシンボルは翼のあるライオンとなっています。ヴェネツィアには、マルコという名の男性がほかの地域と比べて多いといわれています。
聖マタイは天使がシンボルで、元々徴税人だったことから、銀行などお金に関する職業の守護聖人となっています。
イタリアの男の子の名前としても、安定した人気があります。
そして、翼がある牛がシンボルの聖ルカは、初めて聖母マリアの肖像を描いた聖人とされ、画家や芸術家の守護聖人です。
画家の組合の名称が聖ルカを冠した名称になっているのもそのためです。ヨーロッパで一番歴史のある美術アカデミーがフィレンツェに誕生したのは1563年、サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会内の聖ルカのチャペルからでした。
福音史家は、教会に必ずといっていいほどその姿を見つけることができます。
祭壇画に描かれている聖人たちは依頼主の守護聖人や職業に関する守護聖人の場合が多く、聖人たちのシンボルや守護する職業などはその生涯のエピソードに関連付けられているので少し知っていると宗教画を見る楽しみも増えていきます。
2020.9.9

shinako

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