ただいま観光ガイドを対象とするシエナ授業を受講中です。ウェブ授業は終了し、先週現地に赴いての授業第1回目が行われました。
今日はその模様を振り返って書かせていただきます。
一般の団体ツアーではシエナの観光時間1時間という場合が多く、大型バスを降りて旧市街地まで10分ほど坂道を上り、旧市街地のメインストリートを通り、有名なカンポ広場と大聖堂広場を見学してバスに戻る場合がほとんどです。
個人でフィレンツェから日帰り観光する場合でも、シエナのシンボリックな聖女であるシエナの聖カテリーナゆかりの施設、大聖堂施設(ドゥオーモ、洗礼堂、大ファサード、付属美術館)、昼食、カンポ広場とプッブリコ宮殿(市庁舎)など入場観光すると、あっという間に7、8時間過ぎてしまいます。
そのため、大聖堂やカンポ広場から市壁に向かって外の方へ行くことはほとんどない状態です。シエナ派の絵画が多く収蔵展示されている国立絵画館、大聖堂広場の正面にあるヨーロッパ最古の病院だったサンタ・マリア・デッラ・スカーラ救済院も複合美術館となって見学でき、しかも街の中心にあるのですが、こちらを訪れる観光客は非常に少ないという状況になっています。
以前から思ってはいたのですが、シエナは小さいエリアですけれど奥が深いので、堪能するには日帰りでは難しい街です。
シエナに宿泊すると、シエナ県内へも公共交通機関で移動でき、観光の幅も増してよいのではないかと改めて感じました。
さて、旧市街地は変形したY字型をしていて、今もほとんど中世の市壁で囲われており、昔ながらの趣をそのまま残す門から街にアクセスするようになっています。
街には「テルツォ(3の意)」と呼ばれる3つの区域があります。南西から中央がチッタ、南東から中心がサン・マルティーノ、北がカモッリーアです。そして、さらに17の小さな地区「コントラーダ」に分かれています。このコントラーダは、イタリアを代表する伝統行事のひとつであるシエナの「パリオ」のチームになっていることでも有名です。

電車の駅、バスセンターのような広場、大型バスの駐車場があるのもカモッリーア区で、そこからチッタ区の中核部で観光は終了というのが一般的です。
残念なことにサン・マルティーノ区に踏み入る観光客は少なく、その区を訪れるのはくまなく街を味わうヨーロッパのインテリ旅行者に限られているような印象です。大聖堂周辺を含むチッタ区でも、大聖堂広場より南側まで足を延ばす観光客はわずかです。


この日私たちの授業の出発点は、中世らしい市壁に地味な門構えのチッタ区のサン・マルコ門。かわいらしいカタツムリのコントラーダを歩いていくと豹のコントラーダになり、大聖堂付近の鷲のコントラーダ、森林のコントラーダをぐるりと巡り、波、亀、のコントラーダがぶつかるところで午前の授業終了でした。伝統行事であるパリオを意識しながらのレクチャーでした。

お昼休憩を挟んで午後はサン・マルティーノ区の説明で、南の表玄関に当たるローマ門からスタートでした。ローマに向けてのメインゲートなので2重構えのかなり立派なつくりになっています。

ローマ門と比べると、サン・マルコ門は、シエナの領土が広がるマレンマ地域に向かっているので、おかってのような位置づけです。
そしてもっとも厳重な門が、北方のフィレンツェと対峙する3重の門構えのカモッラ門です。
次回の授業がカモッリーア区なので、カモッラ門の写真はまた次回にさせていただきます。
ローマ門から入ったところが雄羊のコントラーダです。現在は世界遺産に登録されているピエンツァの街を作ったローマ教皇ピウス2世のおひざ元の地区です。
ここにあるのがサンタ・マリア・デイ・セルヴィ教会で、いつも行きそびれていた街はずれの観光スポットです。

シエナの旧市街地の南東のはずれ近くの丘の上に位置し、フィレンツェで誕生したセルヴィ・ディ・マリア(マリアのしもべ会)の教会で、フィレンツェのサンティッシマ・アンヌンツィアータ教会と同じ宗派に属しています。
サンタ・マリア・デイ・セルヴィ教会のレンガ積みの立体が折り重なった建築も美しいのですが、さらにここからシエナの街の方を眺めると、大聖堂の正面飾りの上部、大ファサード、大聖堂の鐘楼、クーポラ、そしてプッブリコ宮殿の上部とマンジャの塔すべてが収まって見えます。「あのシエナのパノラマ写真はここからだったのね」という写真をお撮りいただける場所です。

そしてフィレンツェとシエナの凄惨な戦いの象徴のような絵画である、コッポ・ディ・マルコヴァルドのマエスタ(荘厳の聖母子)がこの教会の中にあります。

コッポの現存する作品のうち唯一制作年と彼の作だという確証のある絵画です。
当時フィレンツェを代表する画家のひとりだったコッポは、1260年のモンタペルティの戦いに従軍し、シエナ共和国の捕虜となったのですが、その間に制作した作品のひとつが1261年という記録もあるこのマエスタなのです。
シエナ共和国がフィレンツェに勝利した戦いは後にも先にもこれ1度なので、勝利の記念の意味合いもあって大切に保存されたのかもしれません。
この他にも教会内ではゴシックから近代までの素晴らしいシエナの芸術家たちの作品をご鑑賞いただけます。
トスカーナ州がコロナ感染のイエローゾーンになったとはいえ、閉まっている教会がまだ多い中、一般開放されており、この日唯一屋内の見学ができました。
ここから街の中心部に向かって塔のコントラーダ、一角獣のコントラーダ、カンポ広場のおさらいをして、梟のコントラーダ、トロメイ広場に抜けて解散となりました。(貝のコントラーダは足を踏み入れず)


ウェブ授業も、移動なく自宅でコーヒーを飲みながら講義が聞けるので、楽で効率的です。でも、実際にその場で歩いてみるのとでは記憶のされ方が違うなと、疲れたけれど充実した1日になりました。
コロナ感染の不安が続く中、ウェブの動画情報も増え、楽しく情報を得る事ができるようになりました。でも実際に見て歩くのはやはり違うと実感させられました。行動制限から解放される日が待ち遠しいです。
2021.1.27

shinako

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