今回は前回に引き続き、ガイドの授業で出かけたシエナのお話で、シエナを3区域(テルツォ)に分けた残りのひとつである北のカモッリーア区域がテーマです。
ここではコントラーダの礼拝堂のことを中心に書かせていただきます。
フィレンツェ方面からバスでシエナにやってくると、鉄道のシエナ駅近くにアンティポルト・カモッリーアがあり、次のバス停がカモッリーア門です。


アンティポルト、控えの門という割に2つの門の距離はバス停を設けるほどあります。
昔の巡礼者や、シエナとフィレンツェの戦いに思いを巡らせながら、1270年に建設されたアンティポルトを眺めます。
また、ピエンツァの街を作らせたことで有名な教皇ピウス2世がシエナの大司教だった時にポルトガル王女と皇帝の縁結びをした記念柱もあります。そして、メディチ家支配を強く印象付けるカモッリーア門。街を取り巻いている市壁や建築物が街の歴史を語りかけてくるような印象を受けます。

門をくぐるとヤマアラシのコントラーダです。
コントラーダ(地区)は、モントーネ以外、42もあった自衛団組織がその後に統合編成されて成立しています。元々の母体となった組織が遠征軍に参加したときの活躍に由来する名称で呼ばれるコントラーダもあり、ヤマアラシもその一つです。
ヤマアラシのコントラーダを歩き過ぎるとゴシック様式のサン・ドメニコ教会があります。バスセンターの広場付近のドラゴンのコントラーダ、道を挟んで東側が雌狼のコントラーダ。そこを歩いて昔の巡礼者と同じルートで街の中心に近づいていきます。
サン・ドメニコ教会見学(内部は写真撮影禁止です)して、教会わきの下り坂を行くと、シエナの聖カテリーナの生家があります。この聖女が1461年にピウス2世によって正式に聖人となったのを機に、シエナのサンタ・カテリーナがすごし、いくつかの奇跡を起こした聖なる所として、その後シエナ共和国によって購入され、礼拝所として整備が進みました。

シエナのサンタ・カテリーナの生家は染色業を営み、聖女も合わせて24人きょうだいという大家族でもありました。食堂は別棟になっていて、今は聖女が聖痕を受けたことを想起させる礼拝堂になっています。(この礼拝堂も撮影禁止です)
厨房も奇跡を起こした場所ということで、奇跡が起こったところが祭壇になっています。
壁面全てが聖女のストーリーを示す絵画です。
サンタ・カテリーナは、バチカン、ヨーロッパ、イタリアの守護聖人でもあります。
そして充実したブックショップがあります。
このブックショップそばから下に降りる階段から、この地区のガチョウのコントラーダの博物館と礼拝所がつながっています。
礼拝所の正式な入口からは少し離れて感じますが、この礼拝所や博物館などとして利用されている部分は、主に染色の作業場だった所だそうで、シエナで一番水が豊富なフォンテ・ブランダの近くです。
コントラーダの礼拝所や博物館は予約必須で、必ずコントラーダのメンバーが説明してくださるそうです。
この時の案内の方は、質問の時間も取って惜しみなく説明くださいました。
面白かったのが案内をされたコントラーダのメンバーの方の人生です。彼はヴェネト出身で、親に連れられて子どものころシエナの伝統行事パリオを見て虜になり、7年前に仕事を変え、シエナに移り住んで、常に贔屓にしていたガチョウのコントラーダの洗礼を受けたそうです。
今はパリオのメンバーも国際的になってきていて、主にヨーロッパのパリオに魅せられた方々から多額の献金もあるそうです。
ガチョウのコントラーダの礼拝所は、シエナのサンタ・カテリーナの家の一部でもあるのでこの聖女を祀っています。

コントラーダの礼拝所として最初から整備されたのはここだけと、案内の方は誇りを持っていました。
祭壇に飾られたこの聖女の彫像は、じつは実際とはかなり異なっていて、幼少期からあまり食べ物を口にしていなかったシエナのサンタ・カテリーナは身長130センチほどだったそうです。リアルな背丈で制作された木彫も別の部屋に置かれていました。
壁面は聖女が起こした奇跡の場面のフレスコ画です。

そして、「勝利の間」と博物館には、パリオの勝者に与えられる絹の旗がずらりと展示されています。一番古いものは1700年代でした。
昔のジョッキー(パリオの騎手)の服、コントラーダへの寄贈の品など、展示物についてほとんどすべて解説して下さいました。




よその土地の人がパリオを通じて、生まれ故郷ではない街シエナに郷愁を感じるとは、パリオの力はすごいものだと改めて思いました。
2021.2.3

shinako

最新記事 by shinako (全て見る)
- フィレンツェの守護聖人 - 2021年6月23日
- フィレンツェ、ダンテの特別展とジョット - 2021年6月16日
- フィレンツェ郊外のショッピングモール - 2021年6月9日
コメントを残す