フィレンツェでは、朝夕まだ肌寒いながらも、日差しが強くなり、日中は半袖でもよいぐらいになってきました。
イタリアでは、4月27日から仕事が平常化された分野もあり、仕事再開という知人もちらほらいます。
ほぼ1か月ぶりに、銀行へ行くために旧市街地に出向きました。
新型コロナウイルスのロックダウン後、空気や水が浄化され、ヴェネツィアの運河にイルカが現れ、ナポリ湾が透明度を取り戻したというニュースを見たので、アルノ川も変化を感じられるかしらという期待がありました。
空が写りこんで青く見えますが、濁った緑色、劇的な変化は感じなかったものの、若干透明度が出てきたような気がしました。
アルノ川はフィレンツェの人々にとって、昔は今以上に生活と深く結びついていました。
フィレンツェが中世に繊維加工業で栄えたのも、染色に必要なアルノ川の豊富な水資源があったことも大きな要因だと思います。
そして、化学物質の問題がなかった昔、街の生活排水は魚のえさになっていたのか、川下側のフィレンツェ市壁の外、現在のカッシーネ公園のあたりでは、網を張って大掛かりに漁がおこなわれていたことが、ヴェッキオ宮殿にある1490年に描かれたフレスコ画からわかります。
ヨーロッパの人々が海水浴を楽しみ始めた1700年代、海まで遠いフィレンツェでは、海の代わりにアルノ川で涼をとる習慣が始まりました。1966年、フィレンツェが大洪水に見舞われるまで海水浴場のような光景がフィレンツェのアルノ川で見られたそうです。
1900年代初頭のころと思われる白黒の写真には、海の家のような施設が写っています。
リネンのバスタオルや、汚れを取るブラシなどを有料で提供していたそうです。
岸に服を脱ぎ捨てて川遊びを楽しむ人たちは、服がなくなってしまうこと覚悟だったそうです。
残念ながら、今と変わらない治安の悪さだったのでしょうか。
写真に写っているのは男性の姿ばかりなので、この当時女性は川遊びをしなかったのだろうと思いきや、シャツを着て川に入っていたそうです。
夏蒸し暑いフィレンツェで、今のように気軽にシャワーを浴びることもできなかったので、足を冷やす程度に楽しんでいたのではないかと思います。
今でも夏になると、サン・ニコロの塔近くの岸辺に砂が敷かれ、バールが設置され、浜辺気分を味わいながら日焼けができる場所が登場しますが、川に入ることはもちろんできません。
バカンスが取れないフィレンツェ市民のための最近始まった施設と思いきや、けっこう歴史があったフィレンツェの偽海水浴でした。
2020.4.29

shinako

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