今回は欧米人に急激に認知度が上がり人気が出てきた巡礼道、ヴィア・フランチージェナのお話です。
ヨーロッパの巡礼道というと、世界遺産にも登録されているフランスからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼道が有名です。
ここ数年脚光をあび始めたヴィア・フランチージェナは、出発地点がイギリスのカンタベリーとなっています。ドーヴァー海峡を越え、フランス、スイスを通り、イタリア半島に入りローマのバチカンを詣でる街道です。
10世紀末にカンタベリーの大司教がローマまで往復したときのラテン語の日記が、この街道発見のきっかけになったそうです。
Walty1971, Public domain, via Wikimedia Commons
ヴィア・フランチージェナのルート図
さらにそこからバーリ(プーリア州の州都)に進み、パアレスチナまで巡礼するルート、シチリア島からのルートも確認されています。
このうちトスカーナ州で宿泊所などが設けられていたポイントは、15か所とされています。
ヴィア・フランチージェナの巡礼道、全長3309㎞、146区間,イタリアでは2074㎞、88区間。何とも壮大な街道です。
エミリア・ロマーニャとの州境にあるアペニン山脈を越えると、街道筋沿いに昔の宿泊地の場所が残り、それらは町が栄えて今もなお重要な年や観光地となっている街がほとんどなので、途中観光やグルメも楽しめる感じです。
定年を迎えたご夫婦がルッカからスタートし、ローマまで15日ほどかけて歩いたという話を聞きました。
行きは徒歩で15日、帰路はイタリアの新幹線フレッチャロッサで1時間半、そのギャップがなんともいえなかったそうです。
トスカーナの15か所の街はこのようになっています。
Paulusburg, CC BY-SA 4.0
トスカーナのルート図
少し名の知られた町を挙げると、次のようです。
ピエトラサンタ:大理石の街として知られる。
ルッカ:要塞の街、中世の街として有名ですが、巡礼者にとって大聖堂にあるヴォルト・サントと呼ばれるキリスト像が大変重要な信仰対象で、ここを終着点にした巡礼者もいたそうです。
サン・ミニアート:アルノ川を渡って最初の丘の上の街です。トリュフの産地としても有名で、秋にトリュフ祭りも開催されます。
サンジミニャーノ:中世の摩天楼として大変有名な塔の街。観光の街です。
モンテリッジョーニ:王冠のような城壁をもつ要塞の街です。フィレンツェからシエナへ向かく環状道路右手に見ることができます。
シエナ:ここには巡礼者のために、大規模な救護施設、サンタ・マリア・デッラ・スカーラ救済院が設けられました。中世の救済院や街の様子が描かれたフレスコ画が残されています。
サンクイリコ:ロレンツォ豪華王も逗留した歴史的な温泉町としても有名です。情緒ある世界遺産オルチャ渓谷にある中世の街並みの街です。サンクイリコからトスカーナ州の最後の区間の街、ラディコーファニの近くにはサンフィリッポ温泉もあり、サンクイリコ周辺にはスパ付きのホテルもあります。
中世の政治情勢の変化や街の発展に伴い、巡礼道はさまざまなルートが発展していきました。
宿泊場所も、この地図に書かれた以外にも沢山あります。
ヴィア・フランチージェナのトスカーナ・ルートの特徴は、フィレンツェが入らないことです。
この街道の元を作ったのは西ローマ帝国滅亡後に、イタリア半島の大半を支配したロンゴバルド(ランゴバルト)族でした。その後ビザンチン勢力を警戒してフィレンツェ周辺を通らずティレニア海寄りのルートとなったといわれています。
この巡礼の道の一区間は25km前後なので、オルチャ渓谷やモンテリッジョーニとシエナの間など、一区間だけ楽しむという楽しみ方もあります。
コロナが拡大して以降、屋外のアクティビティーなら感染リスクが少ないだろうということから脚光をあびている感じの巡礼道トレッキングです。
昔の巡礼者の気持ちを重ねながら旅するのもロマンがあって楽しそうだなと思いました。
オフィシャルサイトはこちらから
2021.3.24

shinako

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