フィレンツェは復活祭後続いていた季節の変わり目の悪天候が一段落して、街路樹の緑が一気に濃くなりました。
さて、今回はトスカーナ州のユネスコ世界遺産についてです。
全部で7か所あります。
認定順に
フィレンツェの歴史地区:1982年(フィレンツェ県)

ピサのドゥオーモ広場:1987年(ピサ県)

サン・ジミニャーノの歴史地区:1990年(シエナ県)
サン・ジミニャーノ
LigaDue, CC BY-SA 4.0
シエナの歴史地区:1995年(シエナ県)

ピエンツァ市街の歴史地区:1996年(シエナ県)

ヴァル・ドルチャ一帯(オルチャ渓谷):2004年(シエナ県)

トスカーナ地方のメディチ家の邸宅群と庭園群:2013年(フィレンツェ県10、プラート県2、ピストイア県1、ルッカ県1)

そして、土地や建物ではなく、2011年に「世界の記憶」として世界遺産に登録されたのが、ルッカの歴史的司教アーカイブ(記録保管所)です。
ルッカの旧市街地が世界遺産にならないのは私をはじめ、観光業に従事する者にとっては大きな謎です。
この数を見て、多いと思われたかた、意外と少ないと思はれたかた、さまざまだと思います。
ただ、世界遺産は数だけでは測れないでしょう。一つでもフィレンツェ、サン・ジミニャーノ、シエナ、ピエンツァは、それぞれ旧市街地丸ごとひとつの世界遺産のだからです。
そして、オルチャ渓谷に至っては、その広大な丘陵地帯の歴史的な複数の街を含む景観すべてということなので、トスカーナ州の広大なテリトリーが世界遺産に認定されていることになります。また、オルチャ渓谷内に位置するピエンツァは、二重に世界遺産認定されていることになります。
メディチ家の邸宅群と庭園群は、メディチ家由来のすべての別荘や庭園ではなく、保存状態の悪いものは除外されていますが、それでも14か所あります。そこには個人所有の別荘も含まれているので、これらすべての場所を簡単に訪れることができるわけではないのが残念です。
トスカーナ州はその中に10の県があるのですが、歴史事情に合わせて分けられているため、面積などにもかなりの偏りがあります。北は細かく7つの県に分けられ、南はたった3県です。
また、メディチ家が整備したリボルノ港を核とするリボルノ県以外の世界遺産の都市は、中世の都市国家をひきずっています。
そして、フィレンツェの長年のライバルだったシエナ県は、世界遺産においてフィレンツェ県を凌駕しています。トスカーナ州で最初に世界遺産に認定されたのはフィレンツェですが、7つの世界遺産のうちの4か所はシエナ県に位置しているのです。
さて、観光でよく耳にする旧市街地(歴史地区)や中心街という言葉ですが、それを示すエリアは、イタリアの歴史地区ではごく簡単です。
なぜかというと、中世まで長く都市国家が続いていたイタリアでは、街の周囲に外敵から街を守るため、市壁が築かれていて、この内部が現在の歴史地区なのです。
フィレンツェは1865-1871年のたった5年間、イタリア王国の首都でした。この時代の都市計画で、南側の一部を除く大部分の市壁が取り壊され、環状道路に変えられましたが、その区切りは地図を見るとすぐに理解できます。シエナはほぼ完全に市壁が残されており、第2次世界大戦の際の爆撃もほぼなかったことから、中世の街並みがよりよく残っています。
中世に起源をもつ街という点はオルチャ渓谷も同様です。この地区の魅力は、こうした街が、人びとの長年の努力で開墾され、整備されて海の穏やかな波を思わせる丘陵地帯の高台にまるで島のように点在して、独特の景観をつくり出しているところにあります。
トスカーナ州には個性豊かな長い海岸線もあり、エルバ島をはじめ、美しい島もあるのですが、海岸線や島の世界遺産はありません。そのこともあり、トスカーナ州は海がないかのような印象を持たれがちなのが残念です。
次回はトスカーナの伝統的な食をテーマに書かせていただこうと思います。
ゴールデンウィークも近づく中、フィジカル的に旅行せずともちょっとトスカーナの魅力を味わっていただけたらと思います。
2021.4.21

shinako

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