カラヴァッジョ(その1)
西洋美術最大の巨匠の一人
カラヴァッジョ(1571-1610)の誕生日は9月29日(あるいは9月25日)とされ、2021年はカラヴァッジョの生誕450周年にあたります。また、2010年は没後400年でした。
2019年は、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)の没後500年でした。カラヴァッジョは38歳で没していますから、生年で比較しますと、カラヴァッジョはレオナルドの120年ほど後、ルネサンス期の後に誕生し、美術史上、バロック絵画の巨匠となりました。芸術の中心地も、フィレンツェからローマに移っている時期でした。
著名なカラヴァッジョ研究者・宮下規久朗氏の『カラヴァッジョ巡礼』(新潮社、2010年)には、「カラヴァッジョはいまや西洋美術最大の巨匠の一人であり、その作品はきわめて貴重である。この画家の名を冠した展覧会は毎年のようにどこかで行われるが・・・」(ゴチは引用者、以下同じ)と書かれています。
また、石鍋真澄氏の『カラヴァッジョ伝記集』(平凡社、2016年)の巻頭「はじめに」では、「フェルメールと並んで、世界中の人々を魅了し続ける画家カラヴァッジョ。今日もっともホットな関心を集めている画家だといっていいだろう。心をゆさぶる作品とともに、彼の波瀾万丈の生涯、作品と人間との関係がわれわれの好奇心を刺激してやまない」というのです。
これを見れば、カラヴァッジョに対する評価がどんなに高いかがうかがえますし、フェルメールやカラヴァッジョの作品の「追っかけ」をする人が出るのも肯けます。
近年のカラヴァッジョ展
日本での最近のカラヴァッジョ展をピックアップすると、次のようなものがあります。
2021年、東京・六本木にある国立新美術館で「カラヴァッジョ《キリストの埋葬》展」が開催予定となっていましたが、コロナ禍のために開催中止となりました。
2019年秋には名古屋市美術館で「カラヴァッジョ展」が開催され、《ゴリアテの首を持つダヴィデ》などが公開されました。(札幌・名古屋・大阪を巡回)
2016年には「日伊国交樹立150周年記念 カラヴァッジョ展」が、国立西洋美術館で開催され、《法悦のマグダラのマリア》などが来日しました。「日伊国交樹立150周年記念」が「カラヴァッジョ展」として開催されるということ自体が、カラヴァッジョ人気の高さを物語っているといえるでしょう。
やや古くは、2001年に、東京都庭園美術館の「カラヴァッジョ 光と影の巨匠」展があり、これが日本におけるカラヴァッジョ人気の発端かもしれません。「光と影の巨匠」という表現も、たしかにカラヴァッジョ作品の重要な面をついたものでしょう。
上記『カラヴァッジョ伝記集』収録のジョバンニ・バリオーネ「カラヴァッジョ伝」(1642年)は、2021年に日本で開催予定だったカラヴァッジョ展の、いわば目玉になる作品《キリストの埋葬》について、「これは、まさに遺体を埋葬しようとしているところで、〔中略〕カラヴァッジョの作品中、最高傑作だといわれている」(61頁)と書いています(バリオーニは、カラヴァッジョと激しく反目する画家でもあったとのことですが)。
また、宮下規久朗氏『カラヴァッジョへの旅』(角川選書、2007年)によれば、この絵は「ルーベンスにはじまり、フラゴナール、ジェリコー、セザンヌにいたる幾多の画家たちによって模写されてきた。一時期パリにあったため、フランスで大きな影響を与えたのである。ダヴィッドもこの絵のキリストを名作《マラーの死》に応用している。」(127頁)というのです。
ここで掲げた2枚の絵、《キリストの埋葬》と《マラーの死》を比較してみると、いかがでしょうか。
投稿者プロフィール
- イタリア大好き人間。趣味は読書・旅行・美術鑑賞・料理(主にイタリアン)。「フィレンツェ・イン・タスカ」に不定期に寄稿。
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