「美しきシモネッタ」展を観る
東京・大手町にある丸紅ギャラリーで、ボッティチェリの「美しきシモネッタ」展(2025年3月18日〜5月24日)が開催されています。展示されている絵画の現物は「美しきシモネッタ」(丸紅ギャラリー所蔵)だけという展覧会です。むろん、この絵画の鑑賞のため、関連する作品の写真などは少なからず展示されていて、現物一点でもこんなに興味深いのかと感じさせられました。
ボッティチェリといえば、どなたも「春(プリマヴェーラ)」や「ヴィーナスの誕生」(1485年ごろ)を思い出すことでしょう。私も、20年以上前ですが、フィレンツェのウフィツィ美術館でこの両者が並んで展示されている空間に入り、その大きさ、鮮やかさに思わず息を呑んだものでした。

今、「鮮やかさ」と書きましたが、それはむろん色彩のことですが、「春(プリマヴェーラ)」も「ヴィーナスの誕生」も、テンペラ画だということも作用しているのかもしれません。テンペラ画は、まだ油絵が主流となる前の画法で、時間が経過しても変色しにくいという特長があるとのことで、今回の「美しきシモネッタ」もテンペラ画。

《美しきシモネッタ》(1480-85年頃、65 × 44cm)
今回の「美しきシモネッタ」展では、この作品の来歴に関連する鑑定のことが説明されていますが、その点は、会場に出かけるかたのお楽しみとして、ここではふれないことにします。
その説明とは別に、この「美しきシモネッタ」のモデルは、シモネッタ・ヴェスプッチ(1453-76)だとのこと。そして、彼女が、「春(プリマヴェーラ)」や「ヴィーナスの誕生」のモデルであったといわれているようです。
となれば、「春(プリマヴェーラ)」や「ヴィーナスの誕生」の女性と「美しきシモネッタ」を見比べてみたくなります。会場で写真と見比べ、帰宅して画集でまた眺め、楽しみました。
ところで、ゴンブリッジの『美術の物語』によれば、ボッティチェリに「ヴィーナスの誕生」などを依頼したのは、ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ・デ・メディチで、この人物は、アメリカという名前にその名を残したアメリゴ・ヴェスプッチの雇い主でもあって、「アメリゴ・ヴェスプッチの新世界への航海は、メディチ商会の事業だった」とのことです。
シモネッタはアメリゴの遠縁にあたる人物と結婚したので、シモネッタ・ヴェスプッチというようです。
当時のフィレンツェは、コジモ、ピエロ、ロレンツォ・デ・メディチと続くメディチ家の全盛時代。ロレンツォ・デ・メディチは、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ボッティチェリなどのパトロンでもありましたから、その交流圏の中で、ここにあげたボッティチェリ作品も誕生したといえるでしょう。
またウフィツィ美術館に出かけて、所蔵されている絵画をゆっくり眺めたいものです。
投稿者プロフィール

- イタリア大好き人間。趣味は読書・旅行・美術鑑賞・料理(主にイタリアン)。「フィレンツェ・イン・タスカ」に不定期に寄稿。
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